株式会社ジェイ・プラン

COLUMN
だから開発はオモシロイ

第21回 定借契約の功罪

商業施設新聞 2016年6月21日(火)掲載

 1992年に施行された『定期借家契約』(以後定借と言う)、ご存知のように今駅ビルなどを初めとしてSCと言われる商業施設においては従来までの『普通借家契約』から全てと言っていいほど定借に切り替わっている。
なぜなら、貸す側(以後デべと言う)に極めて有利な契約形態であるからである。この法施行以前は、借りる側(以後テナントと言う)有利のゴネ得とか居座りとか数多くの諸問題が発生し、それらの解決策の為と聞いている。しかし最近その定借適用に、テナントにとって『これはどうしたものか?』と言う幾つかの事例が見受けられるのである。
 首都近郊のとあるSCに出店したファッションチェーン店=A社が開店後3年以上経過しても思うような実績が残せない。数々の手を打ってきたが、当初売上計画の60%にも届かず年間計約700万円位の唯一赤字店舗になっている。A社のMDは業界でも高評価であり、デべからの熱心な出店勧誘を受け出店したのたが、結果的に立地選定の誤りだったのか、自店での努力実力不足だったのか、止むを得ず『退店の意向』をデべに伝えると、定借契約残存期間がまだ3年以上あり、テナント事情での中途解約は契約条項にないので認めないという。それでも退店をするのなら、残存期間の空家賃を支払わなくてはならないかもしれず?ハタと困った。
 次は都心の繁盛SCでの飲食店=B社での例。B社の数多くの店舗の中でも確実に利益を生み、またそのSC内の他店と比較してもトップクラスの売上実績を10年以上続けている折り紙付きの優良店である。また20年近く前に同系列のSCに出店をし、その後複数店になっておりいずれも好成績である。 
定借満了半年以上前にフロアーリニューアルの事前通告があり、内装や経済条件の変更など再契約の話し合いを何度となく進めていた。ところが交渉途中で定例?人事異動がありデべ担当者が変更になってしまった。その案件の引継ぎがされたのかどうかは定かでないが『定借の再契約はしない』との突然の通告。B社にとっては大問題、これまたハタと困った。デべの新任担当者は全く畑違いの業種出身であり、どうやら異業種の利益構造の違いなど理解もせず、もっと家賃が取れる筈だと他テナント誘致を計画しているようだった。またB社との永い取引・信頼関係など知る由もなく、一本の電話による通告だった。
 これらの件がどの様に解決を見るかは分からないが、いずれの例もデべにとっては『定借契約に基づいた正当な経済活動』かもしれないが、『強いデベ』を象徴する出来事であるのはマチガイナイ。

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